sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
司はそっと私の上から退いて身体を起こしてくれると、私の髪直すように梳いた。
ほら、またそういうこと、何でもない顔して普通に出来ちゃうんだから。
相当、手馴れてるよね……
なんて、少しモヤモヤした気持ちに気づかないフリして。
「あ、あのさ……一つ聞きたいことがあるんだけど。」
「……何だ。」
至近距離で、澄んだ瞳と目が合うから
私は咄嗟に俯いた。
「私が、就職先見つけて大学卒業したら…契約は終了なんだよね…?でも、あんなに大々的に婚約者発表までして、いざ婚約破棄になりました……なんて通用するの?」
もしかして、この既成事実を盾に私はこのまま結婚させられるんじゃないかって……
会長も、籍を入れだの、孫だのって。
そんな私の不安を察したのか、司はふっと笑った。
「通用するだのしないだの、そんなもの俺には関係ない。適当に理由つけて、逃げられたなど言えばいい。現に、俺の父親も母に逃げられたからな。その分に関してうるさく言うものはいない。」
………え?
司のお父様である社長が、奥さんに逃げられた…ってこと?
奥さんが愛想尽かしたとか、かな?
「そ、そうなんだ……お、お母様は今どこに…?」
「母は俺が10歳の頃に他界している。」
あ……っと思わず口を開いて固まると、司は私のおでこをピンっと弾いた。