sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
「その子を、離しては頂けませんか。」
心地の良い透き通るような低い声がした。
この声、どこかで……
「な、何だお前はっ!この子は俺のっ、俺のモノだっ!」
いつの間にか浮かんでいた涙で視界が揺れる。
思わず流れた涙に、視界がはっきりとして……
………うそ、どうして────
……どうして、一ノ瀬司が?
夏場の暑い夜にも関わらず、高級そうなスーツを着て……今、私の目の前にいるのは紛れもなくあの超失礼で俺様な御曹司。
どうしてこんなところにいるの…?
「その子は私の大切な人です。その手を、離して下さい。」
一ノ瀬司は何の戸惑いもなく斎藤様との距離を詰めていく。
「た、大切だとぉ?はっ、俺はな、は、ハナちゃんの救世主なんだよ!どこぞの馬の骨かわからんような男に言われる筋合いはないっ!消えろっ!」