sweet♡marriage〜俺様御曹司と偽装婚約〜
鼻先が触れそうなほどの近さに端正な一ノ瀬司の顔が。
ち、近い……っ!
私は思わず息を飲む。
「お、面白がってますよね…」
私のような女を好きになった男の気がしれないって言いたいんだよね、きっと。
「………いや、ただ単純に俺の婚約者を愛した男は……どういう男かと思ってな。」
……お、俺の婚約者って……
思わぬ言葉に私の鼓動はドキ、ドキと早く波打つ。
いや、偽装結婚なんだってば。
この人は何とも思ってない……
やがて離れた指先。
一ノ瀬司はジャケットの内ポケットから何やら取り出し、私の目の前に差し出した。
「さっきは指紋認証で入ったが、鍵でも入れる。……失くしたら知らんからな。」
ぶっきらぼうに手渡された鍵は白い猫のキーホルダーが付いていた。
やっぱり猫好きなんだ……
「ほら、その猫、お前にそっくりだろう。」
なんて言うから、キーホルダーの猫の顔をじっくり見つめると……
何とも微妙な顔つきでこちらを睨んでいた。
わ、私……こんな顔してるの…
何だか、泣きそうにも見える猫のキーホルダー。
ある意味似てるのかも……