あなたへ
幸せの余韻に浸ってた私に声をかけてきた男がいた。
それは……、ケンタ。
この人は、アスカとは真反対の人。つまり、世界で一番私が嫌いな人。
朝っぱらから、ケンタに会うとか私ついてない…。
「あ。ちょっと話があるから、ついてきて。」
「…うん。」
どーせなんかしてくるに違いない。それは、目に見えてる。だから、うまくかわす。
「……。」
「…何?話って。」
冷静に。これから、何言われるか予想しながら答えた。でも次の瞬間、ミナト君の口から思いもよらぬ言葉が飛び出た。
「あの動画を消して、今まで俺がしてきたことも忘れて。…そして、もうキスしたり嫌がらせはしない。」
「……えっ!?」
うそ、なんで??だって、今までやめようとしなかったのに。
「えっ!?って、もしかして俺のキス…そんなに良かった??」
ケンタは、そういってくすくすと笑った。私はというと、誤解を解くのに必死。その様子を見てるケンタは、また笑った。
「馬鹿にしてるでしょー??」
「ううん、かわいい。」
…は?ケンタが、私の事可愛いって言った…?
「何言ってんのよ…?」
次の瞬間。気づいたら私は、ミナト君の腕の中にいた。強い力で、抱きしめられて。
「俺さぁ、好きなんだ。アスカにしゃべりかけられたときに、顔を真っ赤にしてしゃべる姿とか、正直なところとか…。好きなんだよね。」
え…?ケンタが、私を好き…?なにそれ。私は、ケンタに抱きしめられてることを忘れて、考え込んでしまった。
「本気だよ?でも、ひとつ。」
「…何?私は、アスカと付き合ってる。そして、アスカの事を……好き。だから、どんなにケンタが魅力的でも、私は、アスカ以外には惚れない。それくらい、愛してるの。」
我ながら、はずい…。でも、私のアスカに対する気持ちに偽りなんかない。ケンタの瞳を見つめて、そう答えた。
「忘れてない?俺が、動画消す代わりにやってもらいたいこと。」
そういえばっ!そういう事を言ってた気が…。
「何をすればいいの?」
どうせ、またなんか変な事でしょ。
「……アスカと別れる。」
その言葉を聞いた瞬間、私の思考回路は急停止した。