魔法薬局のバイト事情。
慌ててそちらを見ると、その口は光を放っていた。

丸いエネルギーが塊になっているような、そんな感じ。


わたしは今までリンドヴルムはもちろん、他の魔物とこんな風に鉢合わせしたことはない。

だからどんな風に対応したらいいのか分からない。

怖い。

逃げたい。

そう思うのに、足がすくんで動かない。

ぎゅっと檻を抱きしめた。


どうしよう。


恐怖が胸を一杯にするけれど、すぐにロイ君の言葉を思い出した。


『リア先輩、僕を守ってくれるんでしょう?』


艶っぽい、意地悪な笑顔。


なんだかフッと体から余計な力が抜けたような気がした。

そうだね、ロイ君。

約束したもんね。


「わたしが、守るんだ」


トニアースの入った檻を木の根元に置くと、眉を潜めてリンドヴルムを睨み付けているロイ君の前に飛び出して杖を掲げた。


「リア先輩?!」


とても驚いた顔をしているロイ君に、振り返って無理矢理笑ってみせた。


「守るって、言ったでしょ」


ロイ君はハッとしたように目を見開いた。

「防壁――シールド――!」

わたしは目の前に防御壁を造り上げた。

それと同時にリンドヴルムの口から発射されたエネルギーの塊が防御壁にぶつかる。

その衝撃に耐えられなかったのか、わたしの防御壁は端からガラガラと崩れるように壊れ、欠片が木漏れ日に反射してきらめいて溶けるように消えた。

「せ、セーフ…」

防御壁のおかげでなんとか怪我せずに済んだ。

けれど、ホッと一息吐くのも束の間、リンドヴルムはロイ君の方に攻撃をしかけていた。


「流水――ウォーター――!」


ロイ君は冷静な様子で水を空中に漂わせて、飛んで来たエネルギー弾を包み込むようにして攻撃を止めた。

水が弾け飛ぶと同時にバチバチと光が走ったのを見た。

ロイ君は眉を潜めて苦しそうな顔をした。


「ロイ君!」


駆け寄ろうとしたところでロイ君は叫んだ。


「リア先輩、よそ見しないで!」


ロイ君の声が聞こえてハッと前を向くと、リンドヴルムはまた口にエネルギーを溜めて攻撃しようとしているところだった。

慌てて身構える。

防御壁を展開しようと杖を掲げて呪文を唱えようとしたところで、エネルギー弾が発射された。


「防壁――シールド――っ!」


防壁を造り上げたと同時に攻撃がぶつかる。

急いで造り上げたからか質が悪く、まともび攻撃を防いでくれそうにない。

まずいな、と思ったその時だった。


バリン、と音をたてて防御壁は壊れた。

キラリ、キラリと欠片が舞う。
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