魔法薬局のバイト事情。
「そういうわけだから。リアちゃん、頼んだよ」


返事を返そうとしたところで、「リア先輩」とロイ君が呼んだ。


「リヴェドに行きたくないなら行かなくてもいいです。リア先輩がいなくても僕は全然困らないですから」


ロイ君はいつもと変わらない様子でそう言った。

それがなんだか無性に腹立たしくて、悲しくて、悔しくて、胸が苦しい。

そんなに、私は頼りにされていないの?

そんなに、私は足手まといだと思われてるの?

いろんな疑問が飛び交う中、「行くよ」と私は言った。


「リヴェドは危険なの。ロイ君を危険な目に合わせたくないよ。だから万が一危険なことが起こったら、その時は」


宣言するように、わたしは右の人差し指でロイ君を指した。


「わたしがロイ君を守るから!」


ロイ君は呆気に取られたようにポカンと口を開けた。

それから「分かりました」と小さな笑みをこぼした。


不敵の笑みってやつ。


「守れるのなら、守ってみてください」


挑戦的な口調に、少年みたいにワクワクしている瞳。


ロイ君のこの言葉はきっと、宣戦布告。


そう受け取ったわたしは「望むところよ!」と微笑み返した。


杖など必要なものを持つと2人同時に薬局の外に出て、空を飛ぶための箒を手に取り、跨(またが)ると叫んだ。


「飛翔―—フライ―—!」


叫ぶと同時に足元に幾何学模様の魔法陣が浮かび上がり、辺りに風が吹く。


地面を蹴ると、ふわっと浮かぶように飛び上がった。


空中でロイ君と目が合い、無言で頷くと目的地に向かって飛んだ。





目的地は、北の国境の町リヴェド。









______通称、悪魔の森。
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