世界のコトワリ
混沌に紛れて
足首につけられた鈴がなる。
鬼にはわかる、胸の奥をざわつかせる様な音が。
生粋の純血しかもたぬ異質な存在感と透明感を持つモノが裸足で床を踏む。
王家の一族のモノですら地から頭を上げられぬ存在が、豪勢な玉座にて笑む。
長きの間、独裁的に鬼の世界を治め、人と鬼の関係に決定的な亀裂を生もうとする現王コトワリの評判は人からは悪く、同族(鬼)からは絶大な支持があった。
人と鬼を差別し、戦いすらも厭わないその平和主義とは無縁な独裁的で好戦的統治に、意義を唱えるモノが一匹。
その下に生を宿したモノ、サダメ。
サダメはコトワリを王座から引きずり落とすことを計画し、人の王と結託した。
人はサダメを支持し、鬼はコトワリを支持した。
争いは十年続いた。
鬼の王位を継ぐ一族には決まりがあった。
純血の王位継承権を持つモノは愛するモノが出来たとき性を有する。それまでは性を持たぬ半陰陽(アンドロジニー)として生きる。
性を有し、男となった時、王位を継承するという決まりがあった。
サダメはまだ、性を有していなかった。
鬼の世のルールに反すると一族だけでなく同族は皆サダメを非難したが、長きの間鬼の脅威に怯えていた人々はサダメの考えに賛同した。
性を有していないサダメが十年もの間同族と渡り合えたのは、サダメの力がコトワリの力の上を行っているという事実にあった。