恋 文 日 和


例えば、あなたと出会えた事を

『運命』と呼ぶのなら


この儚い光を二人で見られた事は

『奇跡』だと、そうあたしは思いたい。


神様がくれた、夏の奇跡。





「綺麗…。」

喉の奥からこみ上げた言葉は、ごくありきたりなモノ。


でも、心からの言葉、だった。



無数の光が飛び交い、夜空に浮かぶ星でさえ霞んでしまう。

儚くて、美しくて。
けれど、どこか強さを感じさせて。


こんなに素敵な命の光、この世の中にあったんだ。



「菊井、口開いてる。」

「え?あっ!」

ぼーっと見入っていたあたしに、神楽くんが笑う。


恥ずかしくて言葉を失ったあたしは

「何か、よかったな。」

と口を開いた神楽くんに視線を隣へ移した。



「道、迷ってよかった。」

そう言って、あたしを見下ろす神楽くんの瞳がホタルの光に照らされる。






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