恋 文 日 和
た、助かった…。
思わず、桜井くんに心の中で感謝する。
そして
「言っておくけど、」と続けた神楽くんは
「由芽は彼女なんかじゃないから。」
と、そう言って笑った。
「え!?じゃあ、」
あれ、もしかして……。
あたし、何か物凄い勘違い、してる?
よっと声を上げて、神楽くんが河原の石段に腰を降ろした。
その瞬間、離れた手。
…寂しい、と思ったのも束の間、神楽くんはホタルを見ながら言葉を繋げる。
「由芽はイトコだよ。しかも8歳になったばっかりの。」
「へ!?」
イ、イトコ!?
「何かやけにマセててさ、俺の事彼氏とか言うんだけど。」
はは、と笑いを溢した神楽くんは
あぐらをかいた足に頬杖を付いてあたしを見上げた。
「好きな子いたら、俺他の女と遊ばないし。」
夏の風とホタルの光が、神楽くんの笑顔をあたしに真っ直ぐ届けてくれる。
その笑顔に、胸が高鳴った。