恋 文 日 和
3
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蝉の声が、ウォークマンから流れる音楽に弾き返される。
吹き出るように額を滲ませる汗にタオルを押しつけて拭うと、呑まれるような人混みの中でニヤける頬を必死に隠してみた。
でも、焦がすように地上を照らす太陽に隠せるはずもなく。
チラッと視線が合った人が不審な目を投げて来る。
んん、と軽く咳払いをして音楽を切り替えた。
けど、少しでも気を抜けばまただらしなく緩み始める頬。
耳に届くのは、スローテンポのバラード。
失恋した歌詞が切なげに流れて。
この曲を
こんなにニヤついて聴いてるのは、多分あたしくらいだろう。
そんな時、手の中で携帯が震えて視線を画面に映すと
あたしの頬はこれまで以上に緩んでしまった。