恋 文 日 和
濡れた頬を手のひらで拭い、立ち上がったあたしは
「…すぐ、戻ります。」
それだけ告げて、化粧道具を手に休憩所を出た。
逃げるように駆け込んだ洗面所の鏡に映る自分の姿。
確かに、リサさんの言う通り。
「酷い、顔…。」
情けなくて、また泣けてきた。
どうして、なんて
聞かなくてもわかってる。
あたしに
ここを辞めて欲しい人。
…一人しかいない。
でも、今の状況だと
みんなあたしに辞めて欲しいと思ってるんだろうな。
ミスばっかりして
みんなに迷惑かけちゃってるんだもん。
けど……。
「…早く、戻らなきゃ。」
負けたく、ない。
ううん、勝ち負けじゃないけれど
ここで辞めるのは違うと思うから。
「頑張れ、日和!」
鏡の自分に声援を掛け、化粧直ししたあたしは
大きな深呼吸をし、再びフロアへ戻った。