恋 文 日 和


「何よそれっ!!」

「れ、玲!しーっ!!」

久々に袖を通した制服を、夏の熱風が通り抜ける。


ざわつく教室の窓際の席。

今日は夏休みに一日だけある、登校日なのだ。



「だって、そんなの酷くない!?なんなのよ、その女!」

ミーン、と窓の外で鳴き喚くセミよりも大きな声で玲がまくし立てる。



「でも、本当にリサさんかどうか、わからないし…。」

「何言ってんのよ!どう考えたってそいつしかいないじゃんっ!」

身を乗り出し、憤慨する玲。


うーん、と曖昧に笑うあたし。

そんな煮え切らない態度が気に食わなかったのか、玲はガタン!と席を立った。



「あーもう!こうなったら神楽に、」

「玲!」

思わず引き止める。


ほんの少し、神楽くんに視線を向け
再度玲を見上げたあたしは、首を横に振って

「いいの、平気。あたしは全然大丈夫だから。」

そう言って玲をイスに座らせた。



「でも、」

「大丈夫、心配しないで!」



< 133 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop