恋 文 日 和

「…お世話に、なりました。」

チーフにしたように
リサさんにも頭を下げた。


これはせめてもの
あたしからの嫌味だ。


ここを去る理由を作ったリサさんに。

目の前で余裕を見せる彼女に
少しでも強がって見せたかった。




だけど、そんな脆い強がりは
一瞬にしてリサさんの言葉に踏み潰される。


「ねぇ。」

歩き出したあたしを
再びリサさんが呼び止めた。


素直に立ち止まってしまったのは
これから言われる言葉を予期してたからなのか。



「あたし、神楽くんに告白するから。」

「…え……？」


信号が点滅する。
まるで、あたしに危険を知らせるように。

青から、赤へ切り替わる。




「いいよね？」

渡りそびれた横断歩道に、車が次々に流れて。



『告白』


その言葉だけが、余裕の笑みを浮かべるリサさんから
歩道に立ち尽くすあたしへと、真っ直ぐに届いた。