恋 文 日 和
1
「おはよー。」
「久しぶりぃ!」
「夏休みどっか行った?」
笑顔が飛び交う教室。
昨日までの青空は消え
新学期の始まりは、朝から雨で塗り潰されていた。
夏の蒸し暑さに
この雨のせいで、ジメジメとした空気があたしの制服を撫でる。
教室のドア手を掛けて、大きく深呼吸をした。
大丈夫、そう心で呟き
一歩、躊躇いがちに中に踏み出す。
そして
開けた視界に教室を見渡して、ほっとした。
よかった…。
神楽くんまだ来てないや…。
会いたい、と思ってたはずなのに
ちゃんと笑える自信がなくて。
それでも、どこか期待してた自分がいたりして。
矛盾した感情を上手く処理出来ないまま、あたしは
先に登校していた玲に駆け寄った。