恋 文 日 和
「どうゆう事?」
玲を気にしながらも
神楽くんに連れて来られたのは、人気のない屋上に続く階段。
相変わらず、目を逸らすあたし。
「な、何が?」
出来るだけ、冷静を装いながら返事をした。
「何がじゃないだろ?バイト辞めるなんて、俺一言も聞いてないんだけど。」
いつもは違う、少し乱暴な神楽くんの口調。
怖い、と言うよりも
何故か悲しくなった。
理由が理由なだけに、何も言えなくて。
黙っていたら、神楽くんはもっと悪い方に勘違いしちゃうのに
それでも言葉が出て来ない。
「何度も連絡してんのに、菊井全然電話出ないし、メールも返って来ないし。」
はぁ、とあからさまに大きい溜め息が聞こえて
あたしの心がまた一つ、痛み始めた。
ツンと鼻の奥が痺れるのを感じる。
辞めた本当の理由を話したら
神楽くん、信じてくれる?
あたしの言葉を、信じてくれるの?
「菊井、ちゃんと話してくれなきゃわかんないよ。」
…ダメだ、泣きそう。
信じてもらえる気がしない。