恋 文 日 和
ザァ、とグラウンドを叩く雨の中
ビニール傘を差した後ろ姿が、呼び掛けに足を止めた。
荒い息を繰り返すあたしへ
ゆっくりと振り返った玲。
「菊井…!」
追い掛けて来た声に止まる事なく
あたしは雨が降りしきる外に、上履きのまま駆け出す。
「学校辞めちゃうって、どうして!?」
掴み掛かったその拍子に
玲の手から傘が地面に落ちた。
容赦なく空から落とされる雨粒は
一瞬にしてあたしたちの体温を奪ってゆく。
だけど、体は熱い。
喉の奥が焼けるように痛くて。
「ねぇ、玲!答えてよ!」
肩を揺さぶるあたしに、玲は虚ろな視線を横に投げていた。
遮るモノなどない
どしゃ降りのグラウンド。
上履きの内側まで染み込んでくる雨が、心地悪い感覚をあたしに伝えてくる。
「…本当に、」
玲は何も答えない。
だからこそ、言葉がどんどん小さくなってしまった。
「本当に…、松本先生と…?」