恋 文 日 和
「…落ち着いた?」
「うん…、ありがとう。」
体育館の裏、シンと静まった空間で石段に座るあたし。
神楽くんは金網に寄りかかりながら
「ここ、俊介と俺のサボリ場所。」
ニッと笑って、買ったばかりのカフェオレを飲んだ。
その笑顔に、自分なりの満面の笑みで返してみるけど
長持ちはしない。
さっきまで流れてた涙はちゃんと止まったはずなのに
気を緩めばまた零れてしまいそうで
誤魔化すようにあたしもアップルジュースを飲んでみる。
だけど、やっぱり涙の味しかしなくて。
そんなあたしを見て
「それ以上泣いたら、干からびるって。」
神楽くんがおどけて見せる。
ミーン、と忙しく鳴くセミが
同じように泣いてるような気がした。
「…あたしって、」
震えた声がかすれて出る。
一度だけ、すんと鼻を啜ったあたしは
「やっぱり、無頓着だよ、ね。」
言って、スカートを握り締めた。