恋 文 日 和
さわさわと風が吹く。
だけど、夏の熱風を残したままの9月の始まりは
まだまだ熱が冷めそうもない。
いっその事、一気に冬にしてくれちゃえばいい。
ううん、それこそ
春まで飛び越えてしまえばいい。
そうしたら、もう少しまともに笑える気がする。
こんな下手くそな笑顔じゃ、いつまでも神楽くんに心配かけてしまうから。
その時
俯いたあたしの隣に、大きな影が映って。
ふっと顔を上げると
金網に寄り掛かっていたはずの神楽くんが、あたしの隣に腰を降ろした。
「…菊井、合縁奇縁って言葉知ってる?」
「…え…?」
あいえん、きえん…?
聞き覚えのない言葉に、首を傾げる。
ふっと笑った神楽くんは、あたしから視線を外し、真っ青な空を見上げた。
「人と人との関係は、常識では考えられない不思議な縁で結ばれてる。って意味らしい。」
それってさ、と続けた神楽くん。
「菊井と瀬宮が親友になったのも、何かしらの縁だと思わない?」