恋 文 日 和
ごちゃ混ぜになっていた感情が、一つ一つ解けていく。
胸が熱くなって
気が付けば、神楽くんがあたしの頭を撫でてくれていて。
「瀬宮だって、何も本気であんな事言ったんじゃない。菊井だってわかってるだろ?」
『みんながみんな、まっとうな恋してるとでも思ってた?』
『もううんざり。あんたのそうゆう所。』
その手が、温かくて
堪えたはずの涙が、とめどなく溢れてくる。
「大丈夫。瀬宮も、きっと菊井と同じように考えてるよ。」
その声が、優しくて
胸の真ん中に溜まっていた虚無感が
神楽くんの言葉で、埋まったような気がした。
『大丈夫。』
この前まで、あたしが口癖のように溢していた言葉。
曖昧で、頼りのない、言葉。
なのに、神楽くんが言う
“大丈夫”は、どうしてこんなにも、あたしを強くしてくれるんだろう。
もしかしたら
本当に神楽くんはあたしに魔法を使ってるのかもしれない。
そんなバカみたいな事さえ、今なら信じてしまえそう。