恋 文 日 和
意味がわからなくて、神楽くんに首を傾げる。
そんなあたしを見て
ふっと微笑んだ神楽くんは、おもむろに指を差した。
「ほら、」
その指が差した先へ、視線を向けたあたし。
――――心臓が、止まるかと思った。
…嘘、どうして……?
「玲…?」
そこには、確かに
玲が居て。
玲は、少し気まずそうに俯きながら
あたしの対角線に立っている。
「あとは、二人で話しな。」
ポン、と背中を押してくれた神楽くんは
ビニール袋を持ち上げて、そのまま去っていった。
あたしと玲は
二人きりになった体育館裏で、少しずつ距離を縮める。
そして
「…日和。」
懐かしい、その呼びかけが
「……ただいま。」
あたしの視界を完全に滲ませた。