恋 文 日 和
「そっかー、そう言えば菊井さんもこの学校だったんだっけ。」
わかりきってるくせに
そんな事を口にするリサさんを、通り過ぎるみんなが羨望の眼差しを向ける。
あたしは俯き、玲の服の裾を掴んだ。
「神楽くんのクラスってどこ?」
「ちょっと、あんたねぇ…!」
「玲!」
尋ねるリサさんに、玲がずいっと前に出る。
それを止めたあたしは、視線を下に向けたまま答えた。
「…2年、D組です。」
「日和!」
玲があたしを一瞥する。
それを聞いたリサさんは
「ありがと。」
そう言って笑い、人混みの中へ紛れてゆく。
「日和、」
何で、と言いた気な玲にあたしは再び歩き出す。
自分でも
気持ちが上手くコントロール出来なくて。
あの日々だけが
あたしの中で反芻していた。