恋 文 日 和
「いいの?このままで。」
屋上で感じる風に、あたしは黙り込んだ。
いつもは鍵がかけられて入れない屋上も
文化祭の時だけは開放されるのだ。
そして、屋上はダンス部の人たちで埋め尽くされ、ここは野外ダンスフロアーに変わる。
大音量で流れるヒップホップのリズムが
心とは真逆に響いて、思わず溜め息が出た。
「…あの人、告白する気なんだと思うよ。」
玲の言葉が、こみ上げる不安を煽る。
「日和、」
「わかってる。」
遮った声が、想像よりも強く出てしまった。
「…わかってる、」
でも、頭とは反対に体はここから動こうとしない。
『ありがと。』
あの自信に満ちた声。
余裕を見せつけるような表情。
負けない、と思ってたはずの自分は
一体どこに行ってしまったんだろう。
さっきまであんなに、幸せだったのに……。
リサさんの自信をぶつけられて
あたしの心は完全に砕けてしまった。