恋 文 日 和
ありがとう。
ありがとうね、玲。
バカなあたしが
どれだけの言葉を掻き集めても
『ありがとう。』の一言しか出て来ないよ。
「行こう、日和。」
あたしの腕を引く玲に
手の甲で濡れた頬を拭く。
ずずっと鼻を鳴らし、立ち上がったあたしを玲がからかうように笑った。
そんな時
「日和ちゃん!」
誰かの声が、屋上の入り口から届いて
あたしたちの視線がそちらに向けられる。
「俊介!」
玲が桜井くんを呼んだ。
桜井くんは一瞬だけ玲に切なげな視線を投げて、すぐにあたしの元へ駆け寄ってくる。
「日和ちゃん、急いで!」
「…え?」
「俊介、どうゆう事?」
戸惑うあたしに、玲が代弁して聞いてくれた。