恋 文 日 和
焦れば焦る程
涙が止まらない。
頬を流れる涙を
何度も拭いながら、賑わう校内をくまなく探した。
ただ、恋い焦がれたあの背中を。
横顔を。
笑顔を。
このまま、全部なかった事になんかしたくない。
『好きだった』事になんて出来ないよ。
息が上がる。
喉の奥が、焦がされるように熱い。
渡り廊下で立ち止まったあたしは、膝に手をついて
乱れる肺に空気を送り込んだ。
涙が地面に落ち、丸いシミを作る。
泣いちゃ、ダメ。
泣くな、あたし。
大きく息を吸い込み、再び顔を上げ
少しだけ落ち着いた呼吸に聞こえた声。
「好きなの、神楽くんの事。」
音が、消えた。