恋 文 日 和
1
「日和!」
背中から届いた声に足を止めて振り返ると
たった今散ったばかりの桜の花びらが目の前を通り過ぎた。
そして走り寄るその姿を見てあたしは笑顔をこぼす。
「玲、おはよ!」
麗らかな春の日差し。
柔らかい、春の風。
ピンク色した桜並木が続く校舎までの坂道。
それら全てが、あたしを祝福してくれてるような、そんな気さえしてしまう。
「日和、何か今日可愛くなぁい?」
「えっ!?そ、そう?」
鋭い玲の問い掛けに、不自然に視線を逸らし歩みを進めると
「恋する女は綺麗になるってのはこうゆう事か。」
そんな言葉があたしを追い掛けてきた。
「神楽の為、でしょ?」
「ちょっ!玲っ!」
あたしは慌てて玲の口を押さえて辺りを見渡す。