恋 文 日 和
心臓が、止まるかと思った。
『誰か、好きな子…居るの?』
その言葉に体が拒否反応を示す。
どうしよう。
もし、その質問に神楽くんが
“居る”と言ったら。
…とてもじゃないけど、立ち直れる気がしない。
しばらく続いた沈黙の中で
「…すいません。」
と一言だけ呟いた神楽くん。
あたしの全神経が彼の言葉に集中して。
「どうゆう…、」
「俺、」
リサさんの声を遮った神楽くんは、躊躇いがちに
だけど、ハッキリと言った。
「好きな子はいません。でも、」
「…でも?」
鼓動が速まり出す。
苦しいくらいに、激しく。
「気になる子が…います。」
笑い声がこだまする。
それは夕暮れが知らせた、夏の終わり。