恋 文 日 和
「好きだったんだ、入学式で見掛けた時からずっと…。」
頬を赤らめて、照れたように頭を掻きながら
彼は言った。
それを見ていたあたしは、さも人事のように彼を凝視する。
少し日の短くなった夕方の下駄箱。
オレンジに染まるグラウンドを背に今の状況を
ぼんやりと心の中で考える。
見覚えのない顔。
神楽くんよりも少し低い背丈。
着崩した制服とは逆に、揺れる瞳は優しくて。
そんな彼に告白を受けているのは
「……菊井さん?」
…あたし、だ。
「ごめんね、突然…。驚いた?よね…。」
はは、と笑う彼に
「い、いえっ!ぜ、ぜぜぜ全然っ!」
慌てて首を横に振ったあたしは、混乱する頭が今にもパンクしそうで冷静になろうと試みる。