恋 文 日 和


「好きだったんだ、入学式で見掛けた時からずっと…。」


頬を赤らめて、照れたように頭を掻きながら
彼は言った。



それを見ていたあたしは、さも人事のように彼を凝視する。


少し日の短くなった夕方の下駄箱。

オレンジに染まるグラウンドを背に今の状況を
ぼんやりと心の中で考える。



見覚えのない顔。
神楽くんよりも少し低い背丈。

着崩した制服とは逆に、揺れる瞳は優しくて。



そんな彼に告白を受けているのは

「……菊井さん?」


…あたし、だ。




「ごめんね、突然…。驚いた?よね…。」


はは、と笑う彼に

「い、いえっ!ぜ、ぜぜぜ全然っ!」

慌てて首を横に振ったあたしは、混乱する頭が今にもパンクしそうで冷静になろうと試みる。




< 204 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop