恋 文 日 和


「…す、少し…考えさせてもらっても…いいですか…?」


しばらく続いた沈黙に
躊躇いながらも、あたしが出した答え。



それを聞いた彼は

「もちろん!よかったぁー、フラれるかと思ったー。」

そう言って、子供みたいに笑うから
あたしの中の罪悪感が小さな芽を出した。




――答え、なんて
始めから決まってる。

あたしが好きなのは神楽くんで
今あたしが出した答えは、偽善でしかないと。


わかってる。
わかってるのに、どうしても言えなかった。


こんなあたしを好きだと言ってくれた彼を、傷つけるのが怖かった。



だって、あたしは知ってる。

好きな人に想いを寄せる事が
どれだけ、苦しいのか。


どれだけ、もどかしいのかを。



…もし、あたしが
神楽くんに気持ちを伝えたとして、フラれてしまったら。


考えただけで
心が砕けてしまいそうだ。



だからこそ、言えなかった。

『好きな人がいます。』だなんて


どうしても、言えなかった。





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