恋 文 日 和
「…さん?菊井さん?」
「え?あ、ご、ごめんね!」
もの思いにふけていると、三上くんの声があたしを呼び戻した。
テスト終わりの学校は、いつもより少し騒がしい。
笑い声と話し声が交り合う中、廊下の隅で三上くんと向かい合う。
少なからず、周りの視線がここに集中していて。
『三上って、顔いいしすんごいモテるのに、彼女作らないって事で超有名だよ?』
玲の言葉を思い浮かべながら俯いていると、ふいに視界に映った
映画のチケット。
え………?
ぱっと顔を上げると、にっこりと笑った三上くんが言った。
「よかったら、今度の日曜日…どうかな?」
一緒に、と続けて呟いた彼は
みるみるうちに茹でタコのように真っ赤に顔を染める。
「え、あの、えっと…、」
つられて顔に熱が帯び始めた。
ど、どどどどうしようっ!
断らなきゃいけないのに、何て言ったらいいかわかんないよぉっ!!