恋 文 日 和
結局どうする事も出来ないまま、気落ちした面持ちで教室へ戻ると
「日和!」
すぐさま、玲があたしに手招きをしてくる。
「どうしたの?」
「見て見て!あの子、誰か待ってるんだって!」
「え?」
とりあえず
チケットを二つに折って、ポケットにしまった。
玲の隣に並んで、窓の外に視線を向ける。
そして、ふいに思い出す。
廊下で聞いた会話。
その子の事かな…。
「ほら、あの子。」
玲が指差す方向に目を凝らしてみた。
うちのクラスから
校門までは少し距離があるけれど、全く見えない訳じゃない。
木々が生い茂るその隙間から、ちらっと校門が見えた。
だけど、女の子は門に背中を預けるように立っていて
残念ながら、顔までは確認出来ない。
「やべー、超可愛い!あれ、F女子の制服じゃね!?」
「うっそ!どれ!?見えないんだけどー。」
どうやら、桜井くんには見えたみたいだ。
興奮した様子で話す桜井くんに、玲が場所を移動して覗き込む。