恋 文 日 和
ドクドクと心臓が鳴り響く。
それは、痛い程に体中へと振動を伝えて。
『美咲……。』
神楽くんは、彼女を確かにそう呼んだ。
聞き間違いでも
空耳でもなく
彼の唇は、確かに彼女の名前を呼んでいた。
「…神楽、お前知り合い、なの?あの子と…。」
桜井くんは、あたしに気を遣ってか
躊躇いがちに神楽くんへ尋ねる。
玲も沈痛な面持ちで彼を見つめていて。
そんな二人とは裏腹に
あたしはただ黙って床に視線を下げた。
ぼぉ、っと視界が霞んで見える。
廊下から聞こえる笑い声が
あたしの心とは対照的に教室へ響き渡った。
そして、ふっと蘇る記憶。
ああ、そっか…。
だから、あたしは――――…