恋 文 日 和


………………


冷たい空気に
白い息が、口元で揺れて。

同じ色をした綿雲が青空を漂いながら、頭の遥か上を通り過ぎてゆく。


ふう、っと冷えた手のひらに息を吹きかけると
それはふわっと宙に浮かんで、あたしを切なくさせた。



「あー、冬の体育ってどうしてマラソンなんだろ。」

玲が隣で気だるそうにぼやく。



「大体、この寒い中外で走るとかバカらしーよね!」

「そんな事言って玲、持久走速いじゃん。」

ジャージの裾を丸めて、下駄箱から靴を取り出す。



「だから、走るのは好きなんだけど、寒いのが嫌なんだって!」

そう言いながら靴を履く玲に続くと


「それは言えてるよなー。」

ふいに聞こえた声。



ドキン、と心臓が跳ねた。


「俺も、寒くなけりゃーいいんだけど。」

「神楽はホント寒がりだよな。こいつ、ホッカイロ3つ体に貼ってるんだぜ?」

「っ俊介!てめーっ!!」


じゃれ合う神楽くんと桜井くんに、玲があははと笑う。


あたしは靴を履きながら
俯いて視線を逸らした。





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