恋 文 日 和
「随分遅かったね。」
「…あ、うん…。お手洗い、混んでて…。」
「そっか。てか、年明けちゃったな。」
まだおみくじも引けてないのに。
そう呟く神楽くんの横顔が、霞んで見える。
『…わかり、ました。』
そう口にした自分が、未だに信じられなかった。
「おみくじ、次だよ。」
「…うん、」
『…本当に…?』
笑う彼女を、美咲さんを
真っ直ぐに見られなかった。
「あ、菊井、」
だけど、これでいいんだ。
これで…いいはず。
「明けましておめでとう。今年も宜しくな!」
『…ありがとう、日和ちゃん。』
神楽くんが、笑ってくれるなら
それで、いいの。
それが、あたしの幸せだって
言えるように
神様に、お願いするから。