恋 文 日 和
ざわつく他のクラスを通り過ぎ、自分の教室へと入る。
どことなく懐かしい匂いがするのは
今日が新学期だからだろう。
あたしはクラスメイトと軽い挨拶を交わし
そのまま自分の席へとカバンを置いた。
「おはよ~っ、玲!」
「おはよー、って日和。何かやけに元気じゃない?」
「そぉ?いつも通りだけど!」
笑顔を向け、イスを引いて腰を下ろす。
そして、カバンから雑誌を取り出すと
「ねー、玲これ見て!駅前に新しいアイス屋さん出来たの知ってる!?」
そう言いながら、玲によく見えるように
顔の前で雑誌を広げた。
「あー、知ってる!てか、マジで出来たの!?」
「そうなんだよーっ!ねね、今日行こうよっ!」
「いいねー、じゃあ今日はお昼軽めにしておかなきゃ!」
楽しみ~!とはしゃぐ玲を横目に
あたしは心の隅でほっとしていた。
…よかった。
あたし、ちゃんと笑えてる。
昨日何度も繰り返した言葉を、上手く言えた。
これは、あたし自身の問題だから。
「ねー、日和っ!これとか超おいしそーっ!」
「えー、あたしこっちの方がいいっ!」
だから、玲。
もう玲には心配、かけさせないからね。