恋 文 日 和
………………
「日和、準備はいい?」
「う、うん…。」
ごくり、と喉を鳴らして首を縦に振る。
それを合言葉に、玲が教室の扉を開けた。
と、同時に
窓から吹き付ける風が染めたてのあたしの髪をすり抜けてゆく。
「おはよー!」
玲の通る声が教室いっぱいに響き渡り、みんなの視線がこちらに向けられた。
「ちょっと、日和!大丈夫だってば!」
扉の前で石のように固まるあたしの腕を、玲が引っ張って教室に招き入れる。
そしてそれを見たみんなの目が一斉に丸くなっていく。
「嘘、日和?」
「えぇー?全然雰囲気違うーっ!」
「可愛いー!」
女子から沸き起こる黄色い声が、あたしの緊張をほぐしてくれた。
「ほーら、言ったでしょ?」
と、玲は得意気に笑う。