恋 文 日 和
バサ、と音を立てて
あたしの肩からカバンが落ちる。
その音に、三上くんが振り返った。
「…菊井さ、」
―――時間が止まる。
それは、一瞬の出来事だった。
そしてあたしは全てを理解した。
…あぁ、そうか。
「…そうゆう、事…だったんだ、」
「違、」
「近づかないでっ!!」
千切れるようなあたしの声に、三上くんが金縛りにあったように立ち止まって。
「…もう、いい。」
再び言葉を吐き出すと体が震えて、足が竦んだ。
そうか、そうだったんだ。
あたしの悲しみも、苦しみも
全部、全てが仕組まれていた事だったんだ。
『それでも、好きだから。』
あの言葉も
揺れる瞳も、想いも
全部、偽物。
作り、モノ。