恋 文 日 和


「えー、log2底の3=a,log2底の5=bの~…」

先生の声が、耳を通り過ぎてゆく。


通り雨だと思っていた雨は
窓の外に映る景色を、本格的な灰色に変えた。

水を含んだような濁った雲が空を染める。


あんなに晴れてたのに
空は、一瞬にして顔色を変えて。

まるで、あたしの心を映したように
どんよりとした空気を引き連れてきた。




『3年になったら、クラス替えだよ…?』

玲の言葉が、脳裏に焼き付いて離れない。



ふっと隣に座る玲に視線を投げると
黒板に書かれた数式を、真剣な顔付きでノートに書き写していて。

目線を下げたあたしのノートは
真っ白なままだった。




…いいの?
このままで。

何度も玲に言われた言葉を
自分で自分に、問いかける。



3月を迎えたあたしたちに残された時間は
もう、数える程しかない。

もしかしたら、4人とも別々に
離れてしまうかもしれない。



そうしたら、あたしはどうするの?


また、ただ泣いて毎日を過ごすの?
告白も出来ないまま、離れてしまっても

あたしは、後悔しない?



ううん、きっと、絶対後悔するに決まってる。



…でも――――…





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