恋 文 日 和
ガタン!っと大きな音を立ててイスが倒れた。
「あんた、一体何しに来たのよっ!?」
「れ、玲っ!」
掴み掛かる勢いで三上くんに怒鳴る玲に、教室中の視線がこちらに向けられる。
「あんたのせいで日和はねぇ…!!」
「玲、やめて!」
腕を掴み、玲と三上くんの仲裁に入ると、シンと静まる教室は重たい空気に包まれた。
「…ごめん、」
それに気付き、玲が小さく呟く。
俯いて視線を下げると
見慣れた上履きが視界に入って、あたしははっと顔を上げた。
「……神楽く、」
ちょうどよく戻ってきた彼は
「何?何の騒ぎ?」
眉間にシワを寄せ、あたしと玲を交互に見つめる。
何も言えなくて目を逸らすと
「菊井さん、」
と、躊躇いがちに聞こえた声。
「……話が、あるんだ。」
あたしを呼んだのは、言うまでもなく三上くんで。
その言葉に、ぎゅっと手のひらを握り締めたあたしは、一歩教室から踏み出した。