恋 文 日 和


「ごめん。」

人気のない校舎の裏。
そこに着いてまず、彼が口にしたのは謝罪だった。


何となくそうなるだろう、と予想は出来ていたけれど
実際に謝られると、どうしたらいいのかわからない。

謝るという事は、あの日の電話で明かされた事実を
三上くんは認めたって事で。



やっぱり、あたしは騙されていたんだと思うと
人知れず胸は痛んだ。



「…ずっと…話さなきゃいけないって思ってたんだ。」

「……………。」

下げた頭を上げ、三上くんはあたしに視線を合わせる。



だけど繋がった視線は途切れた。

逸らしたのは、三上くんじゃない。
あたし、だ。



どうしてだろう。
三上くんは、あたしを騙してた。

なのに、彼はあたしよりもずっと、傷ついた顔をしてる。



何で?
あなたはあたしを騙してたんでしょ?

どうして、そんな顔するの?



どうして―――…




3月の風が無口な二人の間をすり抜ける。


しばらく続いた沈黙の中
先に口を開いたのは、三上くんからだった。





< 318 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop