恋 文 日 和
「ごめん。」
人気のない校舎の裏。
そこに着いてまず、彼が口にしたのは謝罪だった。
何となくそうなるだろう、と予想は出来ていたけれど
実際に謝られると、どうしたらいいのかわからない。
謝るという事は、あの日の電話で明かされた事実を
三上くんは認めたって事で。
やっぱり、あたしは騙されていたんだと思うと
人知れず胸は痛んだ。
「…ずっと…話さなきゃいけないって思ってたんだ。」
「……………。」
下げた頭を上げ、三上くんはあたしに視線を合わせる。
だけど繋がった視線は途切れた。
逸らしたのは、三上くんじゃない。
あたし、だ。
どうしてだろう。
三上くんは、あたしを騙してた。
なのに、彼はあたしよりもずっと、傷ついた顔をしてる。
何で?
あなたはあたしを騙してたんでしょ?
どうして、そんな顔するの?
どうして―――…
3月の風が無口な二人の間をすり抜ける。
しばらく続いた沈黙の中
先に口を開いたのは、三上くんからだった。