恋 文 日 和
ドン、と背中を押されてふらついた拍子に神楽くんと目が合った。
もう頭は真っ白。
というか、パニック状態と言った方が正しい。
「あ、あああのっ、」
まるで魚のように口をパクパクさせるあたし。
グルグルと視界が定まらなくて、神楽くんの視線から逃げ惑う。
そんなあたしに
彼はにこっと口元を上げて
「あぁ、確かに雰囲気変わったかも。」
と、一言だけあたしに告げた。
……………え?
あたしと同じ事を感じたのか、玲と桜井くんが視線を合わせて目配せしてるのが見える。
そしてあたしを追い越した神楽くんは、クラスメイトと挨拶を交わしながら自分の席へと向かっていった。
「ひ、日和……。」
心配そうに玲があたしを覗き込む。
背中に聞こえる神楽くんの笑い声に、足元から体温が冷めてゆくのがわかった。