恋 文 日 和
下校する生徒たちの笑い声が、遠くから聞こえる。
あたしは黙ったまま、花壇に腰を掛けた三上くんの言葉を待った。
三上くんの視線が
座った事によってあたしより下になる。
「あの日…。」
ポツリ、と呟いて
三上くんはまだ芽しか咲いていない桜を見上げた。
「菊井さんに、美咲との電話を聞かれた日…あいつ、引っ越したんだ。」
「……知ってる…。」
「え?」
「…神楽くんから、聞いた。」
あたしの言葉に
そう、とだけ返事をした彼は
「じゃあ、話は早いね。」
再び視線を前に向けて口を開く。
「美咲は、病気なんだ。」
「え?」
強い風が、びゅうっと音を立てて三上くんの言葉を遮ろうとして。
だけど、それは一瞬で吹き止み
静かになった校舎裏に、三上くんの声が鮮明に届いた。
「心臓の、病気。」
ドクン、と鼓動が跳ねる。