恋 文 日 和


三上くんの話はこうだ。


美咲さんは小さい頃から体が弱く
心臓に疾患を抱えていた。

発作や呼吸困難になる事もしばしばあって
それが災いしてか、内気な性格になってしまった。



病気のせいで、学校を休みがちだった美咲さん。


だけど、ある日を境に
よく笑うようになったという。



「…何でだと思う?」

話を一旦止め、三上くんはあたしに問い掛ける。


「……神楽くんに、出会ったから?」

「…正解。さすが、同じ相手に恋してるだけあるね。」

冗談っぽく、三上くんは言った。


でもその顔は
すぐに真剣な顔つきに変わる。



「神楽に出会って、あいつは変わったよ。」

過去を振り返るように、三上くんが空を見上げた。



「よく笑うようになったし、可愛くなった。」



でも…、と呟いて視線を下げた彼に

「…でも…?」

答えを急ぐあたし。



知りたかった。
真実を全部、聞いておきたかった。


じゃなきゃ、あたしは進めない。



踏み出せないから。





< 321 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop