恋 文 日 和
「神楽と離れたくないって。」
サア、と柔らかい春風が
三上くんの横顔を揺らす。
あたしは、その言葉に
ただ立ち尽くし、何も言えなかった。
だって――――…
「おかしいよな。自分の命が懸かってるんだぜ?」
「…………、」
「それなのに、行かないって頑なに拒んでて。正直…会った事もない、神楽ってヤツを恨んだよ。」
花壇から腰を上げ、三上くんは立ち上がる。
「だから言ったんだ。ちゃんと、ケジメつけろって。じゃなきゃ死ぬんだぞって。」
まるで口を糸で縫いつけられたみたい。
あたしは、何も言葉が出て来なかった。
美咲さんの想いが、自分と重なって。
鼻の奥が、ツンとして
口を開けば涙がこぼれそう。
病気で苦しくても、辛くても
彼の傍に居たい。
事情は違くても、あたしと美咲さんが神楽くんを想う気持ちが
あまりにも酷似していて。
それ程に強い想いが、美咲さんにはあったんだ。
そう思うと、胸が詰まるような痛みが
あたしの体を駆け巡る。