恋 文 日 和
シンと静まったあたしたちの間を
三上くんの声が、沈黙を埋めるように響き渡った。
「それからは、菊井さんの想像通り。」
地面の砂利が鳴って、三上くんがこちらに向いた事がわかる。
「あいつの…美咲の、想いを叶えてやる為に、菊井さんを騙してた。」
「…………。」
「好きだって言って、惑わそうとしたんだ。」
本当にごめん、三上くんは付け足す。
あたしは俯いたまま、顔を上げられない。
美咲さんの為とは言え
あたしが騙されてた事は、紛れもない事実な訳で。
本当は許せないのに、たくさん傷ついたのに
それでも、何故かこの人が憎めない。
理由が、理由だからだろうか。
「……わかった…。」
そう思ってしまう自分を振り払うように、小さな声で呟いた。
「ありがとう、教えてくれて。」
「…本当に、色々とごめん。」
言葉にはせず、首を横に振る。
そして
「ちゃんと聞けてよかった。」
そう言って、ようやく三上くんに笑顔を見せた。
これで、少しはあたしも
前に進めるはず。
ゆっくりだっていい。
人とズレてたっていい。
あたしは、あたしらしく。