恋 文 日 和
………………
指先に触れる水の冷たさが、これっぽっちも感じられない。
鏡に映し出される自分の姿。
そして何度も頭の中でリピートされる神楽くんの言葉。
『あぁ、確かに雰囲気変わったかも。』
……バカみたい。
一体、何を期待してたんだろう。
可愛いね、なんて言ってもらえるとでも思ってたの?
ちょっと外見が変わったくらい、どうって事ないじゃん。
「……はは、何か…あたしって…。」
情けない。
情けなさすぎて、笑えてきちゃう。
おまけに、思い上がってた自分が恥ずかしい。
「…もぅ、やだぁ……。」
泣きたいのに、こんな時まで『お化粧が落ちちゃう』なんて考えてて。
水が流れる無機質な音を聞きながら
トイレの片隅で涙を堪えた。