恋 文 日 和


ガタガタとみんなが席を立つ。

だけどあたしは立てなかった。



「…日和?」

異変に気が付いた玲があたしに近寄って来る。


「どうした?具合悪いの?」

玲の手が背中に置かれ、あたしは黙ったまま首を横に振った。



ぎゅっと握り締めたルーズリーフを手に
ゆっくりと顔を上げ

そして、立っている神楽くんを見上げる。



「…本当、に……?」

震えたあたしの声に、神楽くんは笑って言った。




「本当だよ。」

その言葉で
あたしの涙線は完全に崩壊してしまう。



「日和!?ちょ、神楽!日和に何したのよっ!」

「さぁ~?」

おどけた神楽くんの声。


「日和?大丈夫?何されたの?あたしに言ってごらん!」

玲の言葉に、あたしは首を振った。


手にした紙切れに、ぽたりと落ちた涙。







『俺も、菊井が好きだよ。


ずっと、好きだった。』




だけどこれは、きっと幸せの涙。








< 335 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop