恋 文 日 和
「もー、お前らには絶対見せねぇーし!」
笑うあたし達に、神楽くんは憤慨した様子でアルバムを片付けようと立ち上がった。
その時、ふいにアルバムの隙間から
ヒラリと落ちた、一枚の写真。
それはすぐ近くに舞落ちて、あたしは躊躇う事なくそれを拾い上げた。
「神楽くん、何か落ち…、」
思わず、写真を持つ手が止まった。
笑顔が、あたしの顔から消えていく。
「だぁあ!!これはマズイって!」
あたしの手から、写真を奪い取る神楽くん。
そしてすぐにそれを背中に隠した。
「何?何だよ、俺も見てぇ!」
「うるせー!お前だけには見せねぇーよ!」
桜井くんと神楽くんのやりとりが、遠くで聞こえる。
「…日和?」
玲があたしを覗き込む。
だけど、頭の中が混乱して
視界には写真を握っていた自分の手が、震えていた。
ただ、記憶に焼きつけられたのは
写真に写る、幼い神楽くんと
―――寄り添う、女の子だった。