恋 文 日 和
1
容赦ない夏の太陽の日差しが、焦がすように空から降り注ぐ。
そのせいで、じんわりと滲む汗はいつまでたっても止まらなかった。
だけど、そんな夏の始まりを迎えた暑さは
バスが進む度、だいぶ落ち着いてきたように感じる。
窓の外、広がるのは
青々とした森林と、睡眠効果バツグンの涼しげな川のせせらぎ。
―――でも
視界に広がる景色、自然の音色さえあたしの心が揺られる事はなかった。
ただ
思い出すのは……
『バイト終わったら、会いに行くから。な?』
あの日の、神楽くんの笑顔で。
愛しさに溢れた彼の横顔は、聞かずとも全てを物語っていた。
あれは、確かに
そこに誰かを想う気持ちが存在してた。
ううん、きっと
相手も神楽くんを想っているはずで。
……わかってる。
あたしは、この恋を
想いを封じなきゃいけない事。
あたし、失恋したんだ。
『スキ』
その一言を、言えないまま。