恋 文 日 和
ドキドキと煩い心臓を抑え、地図を片手にじゃり道を歩く神楽くんの背中を追いかける。
そんな時、うっかり見惚れていたあたしは
ピタリと足を止めた神楽くんに、ぶつかりそうになる所だった。
「…おっかしいなぁ。」
ぼそっと呟いた彼に
「…え?」間抜けな声を上げて神楽くんを見上げる。
ふわりと風に乗った神楽くんの香りに、またひとつ胸が高鳴った。
――だけど
このドキドキは
神楽くんの言葉によって違うドキドキに変わる事になる。
「ヤバい、菊井。」
「な、何が?」
振りかえった神楽くんの顔を、暗闇に慣れた瞳が映し出す。
ホー、と鳴いたフクロウが
音を立てて飛んでいくのが聞こえた。
「…道、迷ったかも。」
「え?」
ま、迷った?
それって……。
ポカンと口を開けて立ち尽くすあたしに、困ったように頭を掻いて神楽くんが言った。
「完全に、迷子になった。」
ええええぇぇーっ!?
そんなーっっっ!!!!