恋 文 日 和


どうしようどうしよう、どうしようっ!!

あんなに綺麗に見えていた満天の星空も、今じゃただの風景の一部にしか過ぎない。


ざあっと風が木々を揺らす。
たったそれだけの事なのに、今のあたしには恐怖を煽る効果音でしかなくなってる。


まさか、肝試しに行って
迷子になるなんて…っ!!


もしかしたら、このまま帰れないの!?



「……井、菊井!」

「ひゃあっ!!」

突然肩を叩かれて、思わず腰が抜けそうになった。



「…大丈夫?」

そんなあたしを見て、神楽くんが心配そうに顔を覗き込む。


その言葉にやっと我に返ったあたしは

「へ、へへ平気!!」

首を思いきり縦に振って答えた。



本当は大丈夫なんかじゃない。

明かりは懐中電灯しかないし
とにかく辺りは真っ暗で、少し先ですら全く見えなくて。


ちょっとでも気を抜いたら、それこそ恐怖で足に力が入らなくなってしまう。


気分はまさに、13日の金曜日。







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